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北九州市・下関市・山口市・防府市・宇部市などの中小企業の特許・実用新案・商標・意匠の出願|電気・機械・ビジネスモデル・ソフトウェア・工法・建築・著作権

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弁理士業務暦20年以上、中小企業の知財の出願・訴訟に多くの実績があります。山口県山口市出身です。

information発想力の発明

「良い基本特許」を得るためには「良い基本発明」を生む必要があります。

そして、「良い基本発明」を生み出すためには、先端的な専門知識、タイミング(運)なども重要ですが、何より発想力が大切だと思います。昔から逆転の発想などと言われているものです。

そして、この発想力は、発明者だけでなく、発明の発掘や権利化を担当する知財部員や弁理士にも必要とされる資質ではないかと思います。

発明者から提示された発明をより汎用的に(上位概念的に)漏れの無い形で権利化するためには発想力・想像力が必要だからです。

そして、このような発想力を養うためには、発想法の本などを読むことも良いでしょうが、私は、発想力を体現した発明・特許を見る(読む)ことが最も効果的ではないかと思います。

そこで、以下に、発想力が決め手になった(と私が思う)発明・特許を、幾つかピックアップしてみたいと思います(主には過去にブログなどに書いた文章をまとめたものです)。


「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」のビジネスモデル
ソニーの「スマートヅラ」の特許出願
「赤い靴底」のトレードドレスと特許出願

日本で成立したアマゾンのワンクリック特許(ビジネスモデル特許)
「牛の肉質の改善方法(霜降り肉にする方法)」特許第3433212号(「良い特許」と短いクレームと用途発明)
「体温計付き腕時計」(実公昭43−29993号。コンビネーション発明)
「雪見だいふく」の特許(特許第1537351号。1989年12月21日登録→2001年5月29日期間満了で消滅)
「ICカード」の特許(特許第940548号。1979年1月30日登録→1990年3月3日期間満了で消滅)


最近いろいろ話題になっている「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」(私は行ったことはありません)について、少し特許的な観点からコメントしてみたいと思います。

「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」「俺の割烹」・・・は、既に多くのマスコミで報じられていますが、ブックオフコーポレーションの創業者・坂本孝氏の「俺の株式会社」が2011年9月に東京新橋に1号店を出してから展開しているチェーン店で、立ち食い形式としつつ、ミシュランの星付きクラスの一流シェフが高級食材を使った高級料理を高級店の半分から3分の1の価格で、つまり原価率60%以上(通常の飲食店の原価率は30%以下)で提供するという全く新しい業態による店舗です。
原価率60%以上としながら立ち食い形式にして客の回転率を上げて薄利多売で利益を出す、そのためには常に行列が絶えない店舗にしないと経営が成り立たないという厳しいビジネスモデルです。



このような新しい業態・ビジネスモデルのアイデアは、坂本氏の著書「俺のイタリアン 俺のフレンチ-ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方」にも一部触れられていますが、「星付きレストランと立ち飲み居酒屋との組み合わせ発明(コンビネーション発明)」と言えると思います。

星付きレストランでの一流の料理の提供サービスと、立ち飲み形式で客の回転率を上げる方法とを組み合わせて全く新しい業態のアイデアを創作した訳ですが、星付きレストランと立ち飲み居酒屋とは客層や店の雰囲気などは真逆で、それらを組み合わせようなんて通常人はまず思い付きませんから、組み合わせの斬新性、アイデアの進歩性(特許要件の中の最も重要なもの)は十分にあります。

しかし、「自然法則を利用した技術的思想」(特許法2条1項)という発明性(特許要件の一つ)がないことから、特許を取得することは難しいと言えます(調べてませんが、おそらく坂本氏は特許出願などはしていないでしょう)。
ビジネスモデルもIT技術でカバーされているなどの要件を備えるものであれば発明性が認められますが、この「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」のビジネスモデルは、IT技術でカバーされているとは言えないので、発明性が認められません。

しかし、自然法則を利用した分野かどうかに拘わらず、斬新なアイデアを生み出せるかどうかは、その人の生まれ持った感性や生き方に大きく依存しています。だから、もし坂本氏が経営の分野ではなく研究開発やモノづくりの分野に進んでいたならば、世界的な大発明を幾つも生み出していただろうと思います。

(2014年1月4日公開)

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ソニーが「スマートヅラ」を特許出願。隠しカメラやバイブ、ズレセンサをカツラに内蔵 engadget日本版 2013年11月22日
「メガネ型の Google Glass や 腕時計型のスマートウォッチなどウェアラブルデバイスへの流れが加速するなか、ソニーがカツラのなかにセンサーや無線機能を仕込んだ「スマートウィッグ」の特許を出願していたことが分かりました。 (中略)
「ヅラ」に内蔵するデバイスの例として挙げられるのは、携帯への着信などを知らせるバイブレータ、GPS、頭の前後左右に設置して進む方向を示すナビゲーション用バイブレータ、カメラ、超音波センサ、物理的なスイッチを含むさまざまな方式のリモコン、モーションセンサ、圧力センサ、さらにレーザーポインタ、そして「装着した頭部とカツラの相対位置を検知するセンサ」つまりズレセンサなどなど。」


上図は上記事より引用

ソニーが、様々なデバイスを内蔵した「かつら」の発明を、米国特許商標庁に出願していたようです。
例えば、「かつら+センサ(カツラのズレを測定するセンサなど)」、「かつら+バイブレータ(振動で携帯電話の着信を知らせたり、前後左右の進行方向を知らせたりするもの)」、「かつら+リモコン」、「かつら+GPS受信機」、「かつら+通信機器」などのように、周知の「かつら」と周知の「センサ・バイブレータ・GPS受信機・通信機器など」とを組合せたことによるコンビネーション(組合せ)発明です。

このように、既に周知なモノ同士を組合せた場合でも、進歩性・非自明性が認められるでしょうか?
これについては、2つに場合分けして考えるべきと思います。

第1は、その「組合せの妙」が存在している場合、つまり、ただの組合せではなく「+アルファ」が入っている場合です。
以前に「腕時計と体温計の組合せ発明」(実公昭43-29993号)でも書きましたが、カツラと電子機器との単なる組合せではなく、カツラの中に体温センサや湿度センサや圧力センサなどを仕込んでおき、「それらのセンサを頭皮と接触・近接するように配置した」という構成を付加したら、その「+アルファ」により、常時、体温、汗のかき具合、ストレス、脈波、脳波などの生体情報を測定できるという作用効果が得られるようになりますので、進歩性が認められると思います。
今回の出願中の「かつら+センサ(カツラのズレを測定するセンサなど)」、「かつら+バイブレータ(振動で前後左右の進行方向を知らせるもの)」、「かつら+リモコン(例えば脳波を測定して遠隔操作するもの)」などは、この範疇に入りますので、特許が認められる可能性が高いと思います。

第2は、このような「+アルファ」がなくて、周知のモノ同士を単純に組み合わせただけ、という場合です。
この場合は、原則的に「単なる寄せ集め」と見られてしまい、進歩性が認められることは困難でしょう。
しかし、「周知のモノ同士の単なる組み合わせ」でも、その組合せが全く予想できないような意外性・斬新さを有している場合は、進歩性が認められる可能性もあると思います。
今回の出願中の「かつら+バイブレータ(振動で携帯電話の着信を知らせるもの)」、「かつら+GPS受信機」、「かつら+通信機器」などは、この範疇に入りそうですが、カツラとの組合せは全く予想できなかったと判断されれば、特許が認められるでしょうし、その可能性もかなりあると思います。
(2013年11月22日公開)


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「赤い靴底」は商標 仏ブランドの主張認める 2012/9/6付けSankeiBiz
あでやかな赤い靴底で有名なフランスの靴ブランド「クリスチャン・ルブタン」が、靴底に赤い色を用いるデザインを同社独自の商標と認めるよう主張していた裁判で、ニューヨークの連邦高裁は5日、商標と認める判断を示した。(中略)ただし商標と認められるのは靴底だけが赤く、他の部分が別の色でコントラストがある場合に限るとした。靴底と他の部分の色の対比が制作者の独自性と判断した。(中略)訴訟ではフランスの高級ブランド大手イブ・サンローランの全体が赤いハイヒールが、ルブタンの権利を侵害しているかどうかが争われた。判決は、赤い色が靴底のみでない場合ルブタンに認めた権利の対象にならないとし、サンローランの靴の販売継続は認めた。






※上の写真(クリスチャン・ルブタンの靴=AFP時事)は2012年9月6日付け朝日新聞からの引用です。

2週間余り前の記事ですが、気になったことを記しておきます。
日本でも、「靴底に赤色を用いるデザイン」(商品等表示)を長年使用して周知性を獲得した場合、不正競争防止法上の保護が認められる可能性はあります(不正競争防止法2条1項1号)。

しかし、確かに米国のトレードドレス(直訳すると「商品の衣服」ですが、上記の記事中の米国の「商標」とはトレードドレスのことだろうと思います。追記:米国では商品の色彩も商標登録されますのでこの靴底の赤色も商標登録されているのかもしれません。)や日本の不正競争防止法による保護は可能だとしても、それだけでなく、さらにより強い保護の可能性を探求するなら、米国でも日本でも、斬新なアイデアだとして特許出願することも可能だったのではないでしょうか。

靴底だけを他の部分とコントラストのある赤色などの鮮やかな色とすることにより、靴底なので通常は見えないがたまたま見えたとき人の目を強く惹き付けるという視覚的ないし物理的効果(広い意味での)があると言えますので、「発明性」は認められるだろうと思います。
そして、この「赤い靴底」が開発された当時(ルブタンは1992年から赤い靴底の靴を販売開始)、まだ世の中にそのような実例も発想も無かったとしたら、「進歩性」についても認められる可能性はあるでしょう。

特に、靴底が磨り減っても「赤色」が消えないようにする工夫などを付加すれば可能性はより高くなると思いますが、そこまで限定しなくても、「靴底の材料からは通常在り得ないような赤色などの目立つ色であって靴の他の部分とは異なる色を、靴底の色としたことを特徴とする靴」というようなクレームで特許出願すれば特許が認められる可能性は相当程度あったのではと思います。

まぁあり得ないことですけど、もし当時この「赤い靴底」の話が持ち込まれたとしたら、私だったら、特許出願を勧めたでしょうね。 
(2012年9月25日公開)

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ビジネスモデル特許として有名なアマゾンのワンクリック特許が2件(第4937434号、第4959817号)、出願から14年目に、日本でも登録されました(登録日は前者が第4937434号が2012年3月2日、第4959817号が2012年3月30日)。

この2件の中、権利範囲がより広いと思われる特許第4959817号の出願は、当初の出願(親出願)を分割した子出願をさらに分割した孫出願(追記:特開2010-160799)です。

この特許第4959817号の請求項1は、上記補正書より、次のとおりです。(1)(2)・・・などは私が入れました。

【請求項1】
 アイテムを注文するためのクライアント・システムにおける方法であって、
(1)前記クライアント・システムのクライアント識別子を、前記クライアント・システムのコンピュータによりサーバ・システムから受信すること、
(2)前記クライアント・システムで前記クライアント識別子を永続的にストアすること、
(3)複数のアイテムの各々のアイテムについて、前記アイテムを特定する情報と、前記特定されたアイテムを注文するのに実行すべきシングル・アクションの指示部分とを、前記クライアント・システムのディスプレイに表示することであって、前記シングル・アクションは、前記特定のアイテムの注文を完成させるために前記クライアント・システムに要求される唯一のアクションであり、前記クライアント・システムに対して前記シングル・アクションの実行に続いて前記注文の確認を要求しないこと、および
(4)前記シングル・アクションが実行されることに応答して、前記特定されたアイテムの注文要求と前記クライアント識別子とを、前記サーバ・システムに送信することであって、前記注文要求は、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求であり、前記クライアント識別子は、ユーザのアカウント情報を特定することを備え、
(5)前記サーバ・システムが、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求と、前記クライアント識別子に関連付けられた1または複数の以前のシングル・アクション注文要求とを組み合わせ、1つの注文に結合することを特徴とする方法。

出願当初の請求項とは大きく異なっていますが、かなり広い内容で、良い特許だと思います。
おそらく、次のような内容です。

(1)と(2)・・・クライアント端末が、サーバーシステムからユーザーIDを受信してクッキーなどに保存する。
(3)・・・クライアント端末が、ユーザーが商品を指示するためのアイコンと、ユーザーがワンクリック(後で注文の確認を要求しないシングル・アクション)を指示するためのボタン(=シングル・アクションの指示部分)を、自らの画面に表示する。
(4)・・・クライアント端末が、ユーザーがワンクリック・ボタンを押したとき、それに応答して、指示された商品の注文要求とユーザーIDとをサーバーシステムに送信する。
(5)・・・サーバーシステムが、前記ワンクリックによる注文要求と、それ以前のワンクリックによる注文要求であって同じユーザーIDに関連付けられている注文要求とを、纏めて「1つの注文」として結合する。

上記(1)〜(4)はクライアント端末の動作、(5)はサーバーシステムの動作として構成されています。
上記(5)が特徴(進歩性)のある部分だとして特許が認められたのだと思います。上記(5)により、既に受け付けたワンクリック注文の発送を未だしていない間に同じユーザーから次のワンクリック注文があれば、それらを1つの注文として纏めて発送することにより、運送料が節約できるというメリットがあるからです。

追記:上記の請求項1は、主としてクライアントシステムの側からアイテムを注文するための方法を規定するものです(請求項1中の(5)はサーバーシステムの動作として規定していますが)。これに対して、同じ特許(第4959817号)の請求項9は、主としてサーバーシステムの側からアイテムの注文を受け付ける方法を規定しています。請求項の書き方がクライアント側からかサーバー側からかが違うだけで、発明の実質は全く同じです。参考までに、次に引用しておきます。

【請求項9】
 アイテムの注文を受け付けるサーバ・システムにおける方法であって、 前記サーバ・システムからクライアント・システムのコンピュータへ、前記クライアント・システムで永続的にストアしておくための前記クライアント・システムのクライアント識別子を送信すること、 複数のアイテムの各々のアイテムについて、前記アイテムを特定する情報と、前記特定されたアイテムを注文するのに実行すべきシングル・アクションの指示部分とを、前記クライアント・システムのディスプレイに表示することであって、前記シングル・アクションは、前記特定のアイテムの注文を完成させるために前記クライアント・システムに要求される唯一のアクションであり、前記クライアント・システムに対して前記シングル・アクションの実行に続いて前記注文の確認を要求しないこと、および 前記クライアント・システムで前記シングル・アクションが実行されることに応答して、前記特定されたアイテムの注文要求と前記クライアント識別子とを受信することであって、前記注文要求は、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求であり、前記クライアント識別子は、ユーザのアカウント情報を特定すること、および 前記シングル・アクション注文要求を受信すると、前記サーバ・システムにおいて、前記シングル・アクションによって示されたシングル・アクション注文要求と、前記クライアント識別子に関連付けられた1または複数の以前のシングル・アクション注文要求とを組み合わせ、1つの注文に結合することを備えたことを特徴とする方法。 
(2012年4月17日公開)


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一般にクレームは短いほど良いというのは確かだと思います。

ただ、分野によっては特に弁理士が努力しなくても必然的に短くなるクレームはあります。

例えば「用途発明」と言われる分野では、物質名○○と効能△△を示す「○○を含有する△△剤」とか「○○を投与することにより△△する方法」という形にすれば特許できるので、必然的に短くなります。

「牛の肉質の改善方法(霜降り肉にする方法)」の発明に関する特許第3433212号もこのパターンで、その請求項1は次のとおりです。

「牛にビタミンCを投与することにより肉の脂肪交雑等級を改善する方法。」

牛にビタミンCを投与して霜降り肉にする(牛の肉の脂肪交雑(霜降り)の等級を上げる)という発明で、極めて短くて単純な内容ですが、これだけで特許されています。

この特許のポイントは2つあって、(i)「牛にビタミンCを投与する」と(ii)「肉の脂肪交雑等級を改善する」との2つです。特許侵害だと認定するためには、(i)だけではダメで、(ii)も必要です。

だから、「お前は、霜降り肉にするためのビタミンCを牛に投与している(あるいは、霜降り肉にするための牛用のビタミン剤を販売している)ようだが、それは特許侵害だから中止しろ。」と警告しても、その相手方から「いや、オレは、牛のストレスを解消して健康を維持させるためにビタミンCを投与しているのであって、牛の霜降りの等級を上げるためにビタミンCを投与しているのではない(あるいは、牛のストレス解消用のビタミン剤を販売しているだけだ)。」と反論されると、お手上げになる可能性があります。牛に与える「飼料」には薬事法が適用されないというのがポイントです(後述)。

つまり、上記の(ii)の効用は発明の目的・作用効果に直結するものなのですが、特許侵害行為としてこの(ii)を立証できるかどうかが訴訟の勝敗の分かれ目になります。その意味では、上記の特許クレームは、確かにすごく「短い」けれども、すごく「良い特許」かというと、そうでもないとなるのかもしれません。

つまり、「良い特許」とは、「広い特許」で且つ「強い特許」である必要があるのですが、この特許クレームは極めて短いだけに「広い特許」にはなっているけれども「強い特許」とは言えないのではないか、ということです。

一般的に、用途発明では、短いクレームでもこのような限界は付きものと思います。例えば「ミノキシジルを有効成分とする育毛剤」という特許を取っていたとしても、「同じミノキシジルを有効成分とする血圧降下剤」には効力が及ばないからです。

つまり、薬剤の分野において、用途発明が、事実上、強い効力を持っているように見えるのは、純粋な特許権の力によるのではなく、薬事法の力によるところが大きいのではないかと思います(成分から薬剤を製造して販売するときは必ず薬効とセットにして売り出すしかなく、また薬剤によっては医師の処方箋などが必要とされているため)。 
(2012年8月26日公開)

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特許庁の審査で進歩性が認められて登録査定は出ましたが出願人の都合で登録番号はないようです。
公告クレームは次のとおりです。

「腕時計の本体の裏蓋に凹所を設け、前記凹所に体温計の感知部を装着して前記感知部を裏蓋と同一面とし、かつ、体温計の表示部を文字板の一部に装着し裏蓋の体温計の挿入孔にパッキングを装着してなる体温計付き時計。」

次の図はこの公告公報からの引用で、符号8が体温の表示部、符号12はこの表示部を装着する部分です)。



この発明(考案)は、「腕時計 + 体温計」という典型的な組合せ発明(コンビネーション発明)です。

すなわち、「腕時計」も「体温計」も既存のものに過ぎません。しかし、腕時計と体温計は共に身体に密着して使用するものなので、体温計を腕時計の身体側の部分に配置することにより「何時でも何処でもそのまま(いちいち体温計を身体に付ける動作をすることなく)体温を計測できる」という特有の効果が得られます。

そして、腕時計と体温計とは技術分野などが異なっており組み合わせの動機付けはないので、「腕時計」と「体温計」とを組み合わせたこと(「腕時計+ 体温計」の「+」の部分)は容易ではなかったとして、進歩性が認められたのだろうと思います。

なお、上記のクレームのままでは無理ですが、もし「計時機能(タイマー機能)と体温測定機能との連携手段」(腕時計の計時部からの信号により体温計の計測を開始させる手段)という要素(限定)を補正で付加するようにすれば、「ユーザーがいちいち操作しなくても(知らない間に)毎日決まった時刻に基礎体温などを計測することができる」という特有の効果を主張することもできたでしょう。 
(2010年5月23日公開)

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アイスクリームの外側を薄いぎゅうひで包み、大福のように丸く整形された冷菓です。
この特許クレームは次のようになっています(その下の図面はこの特許の公報のものではなく参考用です)。

「略アミロペクチンより構成されるでん粉と糖類と水との混合加熱により得られる粘弾性物にて冷菓を被覆することを特徴とする被覆冷菓。」



この特許クレームもかなり広いです。2001年にこの特許が期間満了で消滅するまでは、この特許のおかげで類似品はほとんど出てなかったと思います。

この発明は、要するに、「丸い団子状の冷菓を餅皮(粘弾性物)で包む」という発明、つまり、「丸い団子状の冷菓+ 餅皮(粘弾性物)」の組合せ発明です。

そして、「(丸い団子状の)冷菓」は昔からありましたし、「餅皮」も「餅皮(もち米粉を蒸して得られた皮)で小豆餡を包んだ大福餅」のように昔からありました。

しかし、「冷菓」と「餅皮」を組み合わせることにより食感が変わって冬でも冷菓を食べやすい(冬でも冷菓が売れる)という特有の効果があり、「冷菓」と「餅皮」を組み合わせる動機付けは無かったので、「冷菓」と「餅皮」とを組み合わせたこと(「冷菓+ 餅皮」の「+」の部分)は容易ではなかったとして、進歩性が認められたものと思います。 
(2010年5月23日公開)

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invention1
「ICカード」の特許(特許第940548号。1979年1月30日登録→1990年3月3日期間満了で消滅)


この特許の公報によると、この特許のクレーム(特許請求の範囲)は次のとおりです(図面もこの公報から引用)。

「能動素子を含み外部からの入力に応答して識別用の新たな信号を発生する集積回路を識別装置として本体に埋設して成る識別カード。」



極めて広いクレームですが、要するに、「IC(集積回路)をカードに埋設して成るICカード」の発明で、ICとカードとの組合せ、「IC+ カード」という発明です。

この場合、「IC」と「カード」は既存ものですが、ICをカードに埋設することにより何処でも手軽に本人確認ができるなどの効果が得られること、ICとカードとを組み合わせる動機付けは出願当時に無かったことなどから、「IC」と「カード」とを組み合わせたこと(「IC+ カード」の「+」の部分)は容易ではなかったとして、進歩性が認められました。

なお、上記のICカードの基本特許(特許第940548号)は、特許された1979年頃はICの価格が高くて実用化の見込みが無かったのですが、ICの価格が大幅に下がってICカードの商品化が現実になった1980年代後半から特許期間が切れるまでの数年間は、大手電機メーカーなどからライセンスの申込みが殺到し、この間のライセンス料収入は数十億円〜百数十億円(当時)にもなったそうです。

このICカードのアイデアは、1970年当時、有村国孝という青年が、古河電工を辞めて米国に行き、そこで日本より10年早いカード社会(ただし磁気カード)を経験し、「これからは記録容量の小さい磁気カードでは役に立たなくなるのではないか」という問題意識から思い付いたもので、特許権者は有村さん個人になっています。

このICカードの基本特許は、当時の72文字しか記憶できない磁気カードでは将来は役に立たなくなるという隠れた課題・ニーズの発見から生み出されたもので、このような「隠れた先端的なニーズ」を発見する「ニーズ発見能力」が基本発明を生み出すための重要な手法の一と思います。個人でもこのような基本特許を取得できるのですから、中小企業でも十分に可能性はあると思います。 
(2010年5月23日公開)

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